◆料理の特長
寒い地方で魚や野菜の保存食として作られていたのが飯ずし。もち米の力を借りて発酵させます。中でも色映え鮮やかなのが紅鮭の飯寿司。縁起物としての意味を持つ一品は主に正月料理として作られていました。
また、昔の食卓にとっては紅鮭は貴重品。海と面してない地域では大家(おおやけ・資産家)でしか作られませんでした。
特に大勢の客人をもてなす際の料理として作る際には、たけのこ(根曲がり竹)も一緒に漬け込んで、樽の中に紅鮭の紅色とたけのこやごはんの白色が紅白を織りなしていました。
◆材料
・鮭(中くらいのもの)…半身程度
・たけのこ(根曲がりたけ等をビン詰めにしたもの)…1ビン(900cc入り)
・もち米…3カップ
・5倍酢…7カップ
・にんじん(5cm程度のものを千切りしたもの)
・しょうが(1/2パックを千切りしたもの)
・重石…6kg1つ
・すし用樽(無いときは底が平らな容器)
《A》
・とうがらし…2本(種をとり輪切りにしたもの)
・みりん…大さじ3
・酒…大さじ2
・上の5倍酢を更に5倍に薄めたもの…大さじ3
・塩…小さじ2
・笹の葉適宜
(塩を二つまみいれた熱湯にくぐらせ、ラップで包んで冷凍保存しておいたもの)
※塩鮭等を詰めやすいようにビニール袋の口を開いて敷いておく
◆つくりかた
1.皮つきのまま切り身にした鮭を、5倍酢の薄めたもの(酢:水=1:4)に半日漬けておく。
2.たけのこは、少々しょっぱいと感じる程度に塩を入れた熱湯にくぐらせておき、
冷蔵庫で冷やしておく。
3.もち米は柔らかめに炊いておく。
4.炊きあがったご飯が熱いうちに、Aとにんじん・ しょうがを各半分ずつ混ぜ合わせて冷ましておく。
5.樽の中にビニール袋を入れ、以下の(1)~(3) の順序で材料を何重にもかさねていく。
途中、材料間の空間ができないように、上から押すとよい。
(1)皮を上にして、あまり隙間があかないように鮭を敷き詰める。
(2)たけのこは1本のまま先端(細い部分)を中心に向けて敷き詰める。
(3)残ったにんじん、しょうが少々と、4のご飯をのせる。(敷き詰めなくてもいい)
6.最後にご飯を敷き詰め、笹の葉でフタをするようにして覆う。
7.ビニール袋の口を閉じ、蓋をし、重石を乗せる。
◆ここがポイント ~発酵を早めるために、お酢を使うことの意義~
元々、飯ずしは酢を使わずに塩漬された魚や野菜を、麹ともち米とをあわせたものに漬け込み、涼しい保存場所で発酵させることで、傷ませることなく乳酸菌による新たな旨みを生み出す料理。そこに笹の葉が持つ消毒作用を組み合わせた料理でした。
しかし、特にここ最近は気温が下がりにくくなり、麹を使った長期間に渡る低温発酵を行うことが困難になりつつある状況。魚の殺菌や早く発酵を促成させるため、麹を使わずにお酢を使う調理法が多くみられるようになっています(この作り方も、お酢を使ったものを紹介しています)。
一方で、やはり寒い時期に麹屋さんで麹を買って作る飯ずしの味は一味も二味も違うもの。もしかすると飯ずしを伝承するということには、発酵食品の姿をどのように伝承するかという、大きな課題が凝縮されているのかもしれません。